プレスリリース
「M氏のコレクション展」
今回の展示ではある匿名の美術コレクターによって集められた版画作品を展示いたします。
展示作品はレンブラントからエルンスト・フックスまで、個人の作品への「愛」によって収集されたものです。
個人のコレクションは、美術館などの団体が体系的に行うそれとは違い、おそらく本人でも把握不可能な脈絡のない「何か」によって突き動かされるものではないでしょうか。そしてコレクターはその「何か」が一体何なのか、作品を見るたびに自分自身に問いかけているのではないでしょうか。
その作品への問いかけは、またその作品への愛着を増幅させ、自分ではない何者かが残した痕跡を何故自分のものにしようとするのか、その答えのない問いを反復する快楽を与えるものなのかもしれません。
今回はM氏による収集品をこっそり覗き見し、その「楽しみ」の一端を感じていただこうという企画です。
作者略歴
マックス・エルンスト MAX ERNST(1891-1976)
画家・彫刻家。ドイツ生まれ。1920年代、シュールレアリスム運動に参加する。フロッタージュなどの技法を考案し、コラージュ・ロマン「百頭女」を1929年に出版。またルイス・ブニュエル、サルバドール・ダリとの映像作品「黄金時代」にも出演している。
レンブラント・ファン・レイン REMBRANDT HARMENSZ.VAN RIJN(1606-1669)
17世紀の代表的なオランダの画家。肖像画、宗教画、神話画などあらゆるテーマの作品を手掛けた。集団肖像画の傑作「夜警」(1642)や多くの肖像画をはじめとする油彩画で知られるが、版画の作品も多い。
マン・レイ MAN RAY(1890-1976)
画家、写真家。アメリカ生まれ。ダダイスト、シュールレアリストとしてその多才ぶりを発揮した。作品としてのレイヨグラフ、ソラリゼーションなどの技法を考案。映画の製作も手掛ける。
エルンスト・フックス ERNST FUCHS(1930- )
画家。オーストリア生まれ。1960年代に隆盛したウィーン幻想的リアリズム派の一人。ヒエロニムス・ボッシュやギュスターヴ・モローの画風を彷彿とさせるその細密画は、神秘的なエロティシズムに溢れている。
ケーテ・コルビッツ KATHE SCHMIDT KOLWITZ(1867-1945)
ドイツ生まれ。版画家、彫刻家。2つの大戦に挟まれた当時の労働者、農民、女性など社会的弱者をモデルに作品を作り続けた。ファシズムに抗い、プロシア美術アカデミーから追放される。一貫して反体制・反戦争の立場を貫いた。
アーサー・ルイス・ピザ ARTHUR LUIZ PIZA(1923-)
ブラジル生まれ。1955年にパリに渡り、銅版画の技術をマスター、彼独自の方法を確立する。非常に厚い銅板に、彫刻刀とハンマーで切り込みを入れ、オリジナルのインクでプリントを作り出す。作品はニューヨークのMOMAをはじめ、ポンピドーセンター(パリ)など世界中の美術館にコレクションされている。
ハインリヒ・カンペンドンク HEINRICH CAMPENDONK(1889-1957)
画家。ドイツ生まれ。20世紀の芸術運動、ドイツ表現主義を担った芸術家の一人。武骨で牧歌的なタッチで人間の理性を超えた内部を表現する。マルク・シャガールを彷彿とさせる動物の作品なども多数ある。
ルフィーノ・タマヨ RUFINO TAMAYO(1899-1991)
メキシコ生まれ。深い質感とシンプルに構成された作風は、ミクゾグラフィア(MIXOGRAFIA)と呼ばれ、20世紀中南米を代表する画家。またメキシコ革命下で興隆した壁画運動にも参加、しかし政治的な運動には距離をおいた。
ウィフレド・ラム WIFREDO LAM(1902-1982)
キューバ生まれ。祖国キューバの血と、若いころからヨーロッパにおいて影響を受けたキュビズム、シュールレアリスムの要素が混合したモダンプリミティヴィズムのシンプルで力強い作風で知られる。アンドレ・ブルトンの詩集「Fata Morgana」の挿絵も描いている。
ヴォルス WOLS(1913-1951)
ドイツ生まれ。画家、写真家。戦後の主要な美術運動「アンフォルメル」の先駆者とされる。大戦時祖国従軍を拒否し、政治亡命者となる。主にフランスで活動する。ヴォルスの作品はサルトルによって高く評価され、著書の挿絵を担当している。