写真展 |
2002年 |
『L’exterieur』 銀座ニコンサロン |
2003年 |
グループ展『un petit bonjour!』 ギャラリー・エス |
2005年 |
『Clover』 Roonee247 photography |
2007年 |
『OFF SITE』 NADAR/SHIBUYA355 |
収穫が終わり、冬を迎えると、茫々と生い茂っていた畦道の草も色を失い、集落の周りはほぼ茶色い地面ばかりになる。そしてただの土くれに還った土地は次のシーズンを迎えるまで静かな眠りにつく。つかの間の無為の時間を経て、暖かくなれば辺り一面は再び緑を堪えた様相へと変わるのだ。
久しぶりに帰省した僕は、朝早く起きると霜の降りた家の周りを何かを確認するみたいに歩いていた。自分がいない間に変わったものが知りたかったのかもしれない。田舎を離れて10年になろうとするが、その間に僕の間借りする街の周りは秒進分歩の早さで色んなものが消えて、色んなものが出来、猫の目みたいに変わり続けている。見ていてちょっと具合が悪くなる程にだ。
同じ時間を 重ねてきたにも関わらず、眼前に広がる田舎の景色は見渡す限りなんにもない見慣れた休耕地で、僕は突然そのことに感動した。ゆるやかな時間の繰り返しの中に横たわる静かな地表はとても有機的な密度で僕を圧倒した。はじまるものが見えないままに、ゆるゆると何かが終わり続けているのは確かなことだろう。その終わりの中で規則的に同じサイクルが繰り返されて行く。土は土として在り続けている。
そしてこの土壌をつくり上げているものは、父や母、祖父や祖母と、脈々とした沢山の血の繋がりなのだと思うと、漠とした眺めの奥から大きな時間の営みが迫って来るようで遠い気分になった。
僕は急いで家に戻ってカメラを手にする。それから自転車にまたがると田園の中を切り裂くように延びる農道へと走り出た。そして立ち止まっては、まるでもがくみたいにシャッターを切り続けていた。