下向きながら角から角へ、さらに次の角へ道を歩く。顔を上げた時、壁ばかりが列をなして並んでいる。真正面には、ただ次の角があり壁がある。首を右にズラそうが、左に顔を向けようが、一向に視界物は何の変化も起きない。そもそも、期待通りに「こと」は進んでいかない。いや、期待という言葉があるから、そのことを考えてしまう。
なにも起きない。ただ次々にある角に向かって壁つたいに歩く。「こと」が起こらないことを見過ごさないように、カメラのシャッターを押す。視線は彷徨い、記憶は惑う。細部はより鮮明に、皮膜は震える。その像は確実にフィルムに定着され、居心地の悪そうな素振りをして、静かに待っている。
作家略歴
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吉田 徹 |
1977年 |
大阪生まれ |
2004年 |
東京綜合写真専門学校 卒業 |
2006年 |
個展「靴音」ギャラリー山口 |
2007年 |
グループ展「アート・ジャム ギフト展」ギャラリー山口 |