何を期待していたわけでもないが、写真を撮ることで、世界は拓けていくものでもその逆でもない。
いつかは過去となってしまう今や未来があり、思ったことでさえ次の瞬間には過去となって忘れられている。それは見るということにも言えることで、その瞬間瞬間に無意識に見ている視線は定着することがない。だから自分は写真を撮っているのではないかとおもうことがある。
シャッターを切りながら、いつか来たるべきときをおもう。恐れのようなものを感じながら。それは過ぎ去って行く時間に対する感傷的なものなどではなく、もう早くそのときが来てしまえば良いという、ここから逃げ出したくなるような投げやりな気持ち、そしてそのときがずっと来ないでほしいという、今このときを手放したくないような願いにも似たものとの矛盾の積み重なりが、写真となっているのかも知れない。