真冬の1月、高知県のひとけのない北部の山間部を吉野川に沿って西に向かって走っていた時、湿気を帯びた空気の中にたたずむその赤い橋に出会いました。
すでに午後の3時を回っていたので、間もなく太陽が目前の山の稜線に落ちてしまうと感じて、急いでカメラをセッティングし、あれこれ迷わずに無心にシャッターを切りました。撮り終えるとサッと機材をたたみ、いつものようにその場を速やかに離れて帰路に着いたことを覚えています。
後日、出来上がったこのプリントを見ると、モヤと逆光によって緑色の背面の山肌が書き割りのように平たく表現されていて、そこから補色の赤い橋が飛び出てくるさまが、撮影した時に見た記憶より、より強調されているように感じました。
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略 歴 |
1949年東京生まれ。東京芸術大学大学院油画専攻修了後、ベルギーのゲント市王立アカデミー写真科に入り、写真を本格的に始める。
1992年、写真展「日本典型」で第17回木村伊兵衛賞受賞。同年、ニューヨーク近代美術館にて「New Photography 8」に選出され出品、1997年にシカゴ現代美術館で個展「Toshio Shibata」を開催するなど、アメリカをはじめ国際的に活躍。
2000年代よりカラーの作品にも取り組み始め、その表現の領域を広げる。2008年に東京都写真美術館で「ランドスケープ − 柴田敏雄」展を開催し、翌2009年に日本写真協会作家賞、第25回東川賞国内作家賞を受賞。 |
近年の個展 |
「Bridge」(2018年・大和日英基金、ロンドン) |
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「Japanscapes」(2017年・ギャラリー・ルイゾッティー、サンタモニカ) |
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「Het gemaakte Landscap-Foto’s van Shibata Toshio」(2017年・シーボルトハウス、ライデン) |
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「Bridge」(2017年・ヨシアキ・イノウエ・ギャラリー、大阪) |
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「Toshio Shibata Photography Solo Exhibition」(2017年・徳鴻画廊、台南市) |
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「Harmony」(2017年・ローレンス・ミラー・ギャラリー、ニューヨーク) |
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「Constructed Landscape」(2017年・1839當代藝廊、台北市) |
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「31 Contact Prints」(2017年・ギャラリー・アートアンリミテッド、東京) |
近年の主なグループ展 |
「記憶と光 日本の写真 1950-2000」(2017年・ヨーロッパ写真館、パリ) |
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「Japanese Photography from Postwar to Now」(2016年・サンフランシスコ近代美術館) |
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「与えられた形象−辰野登恵子・柴田敏雄」(2012年・国立新美術館)など。 |
パブリックコレクション |
東京国立近代美術館、国立国際美術館、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ポンピドゥー美術館など国内外多数の美術館に作品が収蔵されている。 |