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外久保恵子

Keiko SOTOKUBO

© Keiko SOTOKUBO


失われた記憶


もっとよく記憶を取り戻すため、記憶を失うこと…。忘れ、追い払わなくてはならない。とても多くの、いやあまりに見すぎた数々のイメージを。外久保恵子はいつも都市郊外を徘徊する。そしてきっとその歩調と、記憶の脈絡が失われることがあるのだ。そのとき、しばらくするとわたしたちは他の場所にいることに気付き、木々を見てこう呟く、ここは田舎なのだろうか?わたしたちは出会い、出会った。そして疎遠になり、道に迷う、果てしない記憶の中で。

もっとよくこの記憶を取り戻すため、それは失われ、忘れられなくてはならない。2日前(あるいは7年前)に撮られた映像、そしてあの日にやったこと、言ったことも。もう一度出会うために新しい迷宮の中を徘徊する。わたしたち自身の大脳の脳回を生み出す、おそらくは誤りである僅かな手がかりばかりの迷路の中を。― わたしは一体どこで陶器の犬を見たのだろうか?

それらは緑色だった?灰色?いや緑青色?ただそれだけだった?写真はわたしたちの記憶を助けることはほとんどないだろう、何も語らないのだから。写真は、現実の、あるいは想像上の記憶を映写するための、定着前の映写幕であり、それはわたしたちの大脳の脳回を生み出す迷宮を、子供がその上に延々と描く砂浜のようだ…。でも教えてください、昔、陶器でできた座った犬を見たことはありませんでしたか?

それはかつて…、かつて?… いやそれはこれから見ることになるだろう… 現像し、現像されたばかりの様々な思い出を忘却する記憶の迷宮の実験室のなかで、宿命の交差する暗室のなかで。

グザヴィエ・マルテル 写真批評 2016
(ジャンヌ・モロー、イタロ・カルヴィーノ、スタニスワフ・レム、デヴィッド・バーンに謝意)

   
略 歴  静岡県浜松市生まれ、東京在住

     
  個  展  1992 『縁辺、そのまどろみ』ツアイト・フォト・サロン、東京
  『ざわめく流れ、うつろな水』ミノルタ・フォトスペース、東京
  1993 『やわらかい水』パストレイズ横浜フォトギャラリー、横浜
  1995 『ゆれる翳』パストレイズ横浜フォトギャラリー、横浜
  『NIGHT AND DAY』平永町橋ギャラリー、東京
  1996 『空と叢』ギャラリー ル・デコ、東京
  1998 『PASSAGE』ギャラリー アートグラフ、東京
  1999 『PASSAGE,RÉPÉTITION』ギャルリサテリット エスパスマリーK、パリ フランス
  2000 『パッサージュ、反復』銀座九美洞ギャラリー、東京
  2001 『PÉRIPHÉRIE』ギャルリサテリット エスパスマリーK、パリ フランス
  2002 『縁を沿う』銀座九美洞ギャラリー、東京
  2003 『NOW-HERE』ギャルリサテリット、パリ フランス
  2004 『NOW-HERE』ギャラリー山口、東京
  2007 『些細な出来事1-22』ギャラリー山口、東京
  2009 『コペルニカニッシェ・ウエンドゥング』ギャラリー山口、東京
  2012 『MUR LEZARDÉ』ギャルリサテリット、パリ フランス
  2013 『IN THE STILL OF THE DAY』ビーンズソウルギャラリー、ソウル 韓国
  2014 『ことの中途に』ザ・ホワイト 東京
    『LA NUIT REMUE』ギャルリサテリット、パリ フランス
  2016 『mémoires perdues』ギャルリサテリット、パリ フランス
グループ展等 2000 『EXPOSITION 21』ギャルリサテリット、パリ フランス
  2008 『ART JAM』ギャラリー山口、東京
  2016 『LE BAL』ツアイト・フォト・サロン、東京
  2017 『PHOTO LA』ロサンジェルス、USA