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鵜養 透

Toru UKAI

© Toru UKAI


Invisible Machinery


私が最も関心を寄せるもの。それはこの社会に密かに息づく、見えない構造です。私たちが存在する限り、その構造もまた働き続けます。それはしばしば私たちを抑圧しますが、元来私たちの欲望の総体から生まれたものに他なりません。私はその構造を「Invisible Machinery(不可視の機械)」と名付けました。それはこの社会の慣習、法、システム、あるいは建築のうちにさえ見出せますし、私たち自身の振る舞いや仕草、姿体そのものとして現れることもあります。「不可視の機械」は私たちの外部に存在するだけでなく、私たち一人一人の内部でも作動しているのです。それは文字通り目に見えませんが、徴(しるし)は至るところに見出せます。そして、その不可視の構造を最もよく捉え得る手立てが写真であると、私は考えます。

写真は私たちの純粋な視覚とはおよそ異なる何かです。私たちの視覚は動的で、流れ続ける時間、つまり私たちの「生」そのものに依拠しています。一方、写真は静的で、時間=生を目の前の現実から除去します。その意味で、写真は「死」の技法であり、撮ることは「止まること」「止めること」に他なりません。そして、だからこそ、とめどなく流れ過ぎる私たちの生の内に隠され、看過される何物かを、一枚の写真は決定的に知覚することができるのです。写真とは可視と不可視の間を往還する秘術です。

これら一連のイメージは複数のプロジェクトのために撮られました。「Invisible Machinery」「Prewar Days(戦前)」「Theater Degree Zero(零度の劇場)」「Baroque for Life(生のためのバロック)」等々。しかし、私が何をどう撮るにせよ、すべてのイメージは避けようもなく「不可視の機械」というコンセプトに収斂します。それが私の目の宿命であり、私はそこから逃れることができません。

       
□略 歴  1985年   東京大学文学部卒業
  1985年〜2000年   出版社勤務
  1998年   在職中、第7回「写真新世紀」展にて奨励賞
  2000年〜2010年   ライターとして活動
  2011年   写真家に転身

       
□主な展覧会等  2000年   「LOVE & POWER Borderless World」(スパイラル/東京)
  2005年   個展「終着駅から〜広州火車站(駅), 1997」(Gallery éf/東京)
  2011年   個展「東京・上海〜天地之間」(上海・中国)
  2013年   「RESONANCE Lodz-Tokyo」(ウッチ・ポーランド)
「Artist as Curator - Spectacle in Photography」(ベルファスト・フォトフェスティバル)
「LITTLE BIG WEB」(チュワン・ベルギー)
  2014年   シアターピース「Pulvérisés」(ストラスブール・フランス)
「Pour le plaisir」(チュワン・ベルギー)
  2015年   「Bozar de l'Abattoir 2015」(ベルゲン・オランダ/サンブルヴィル・ベルギー)
「Autoportret」(ウッチ・ポーランド)
  2016年   「Double Attractions」(シャルルロア・ベルギー)
「Unseen Photo Fair」(アムステルダム・オランダ)
□主な出版物等  2002年〜
2006年
  「NHKラジオ中国語講座」テキストに中国関連記事と写真を連載
  2014年   ブックレット「Invisible Machinery」(Velvet Cell, UK)
  2017年   ブックレット「空-Kû」(Gram Publishing, Italy)
写真集「Invisible Machinery」「Invisible Boundaries」(iki Editions, France)