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2019年4月2日(火)- 4月20日(土)

兼子裕代写真展 『GARDEN PROJECT』

13:00-19:00 日・月曜休廊

作家略歴    作家コメント

© Hiroyo KANEKO


展示内容:カラー写真 約20点、展示予定


トークイベント

4/6(土) 15:30〜 先着25名(無料)
ゲスト:中村 美亜 九州大学大学院芸術工学研究院准教授(芸術社会学)
トークイベント後にレセプションを行います。

関連イベント:兼子裕代 写真展 GARDEN PROJECT

光と土ー持続する希望のために 2019.3.23(土)-3.29(金)
九州大学大橋キャンパス デザインコモン2階
http://www.sal.design.kyushu-u.ac.jp/




作家略歴

青森県生まれ。現在カリフォルニア州オークランド在住。明治学院大学文学部フランス文学科卒業後、会社員を経てイギリス・ロンドンで写真を学ぶ。1998年より写真家、ライターとして活動。2003年サンフランシスコ・アート・インスティチュート大学院に留学。東京国立近代美術館、サンフランシスコ現代美術館、ニコンサロン、サンフランシスコ・カメラワークなどで作品を発表する。2009年に家族の入浴を撮った「センチメンタル・エデュケーション」でアメリカ新人作家に送られるサンタフェ写真賞受賞。サンフランシスコ現代美術館、フィラデルフィア美術館に作品が所蔵される。

兼子裕代HP http://www.hiroyokaneko.com/





<ガーデン・プロジェクトについて>

ガーデン・プロジェクトは、1992から2018までの26年にわたり、サンフランシスコ郡刑務所第5庁舎に隣接した敷地で農園を運営していたNPOです。創設者であるキャスリン・スニードの元で、低所得者やマイノリティ・コミュニティから雇用された大人や学生たちが共に農作業を行ない、有機野菜や草花を育てていました。収穫された農産物は、ホームレス・シェルターや高齢者施設に寄付され、草花は市街地の植栽に提供されていました。

アフリカン・アメリカンであるキャスリンは、1970年代に若くしてシングル・マザーとなり、東海岸からカリフォルニアにやって来ました。一念発起でロー・スクールに通い弁護士となり、刑務所で働きながらこの活動を思いついたのだそうです。その背景には、当時もそして現在も、有色人種、特にアフリカン・アメリカンの人々が、圧倒的かつ不当に検挙率が高く、再犯率も高いという現実があり、貧しさから教育の機会が十分に与えられず満足な仕事につけない、そういった差別、貧困、犯罪の連鎖が、 彼女を駆り立てました。

ここでは、黒人、白人、中南米系、アジア系など様々な人種が一緒に働いています。中には英語でのコミュニケーションが難しい人もいます。しかし、皆、真面目で、協力的で、穏やかで、競争がないのです。これは自然を相手に働いていることが大きな要因であると言えるでしょう。

ガーデン・プロジェクトは、2018年の6月、理由は明確にされないまま、おそらく政治的な背景により閉鎖に追い込まれ、解散しました。


<写真について>

2016年の8月、私は縁あってガーデン・プロジェクトで働くようになりました。菜園に興味があったことから最初はアルバイトのつもりでしたが、働き出してすぐに、ここで写真を撮りたいと考えるようになりました。カーデン・プロジェクトはその成り立ち、環境、働く人々全てが、貧しく質素であると同時に豊かで美しく、社会的で人間的、犯罪と隣り合わせで平和を実践する、まるで不条理のユートピアといった場所でした。

実際にスタッフとして働きながらであったため、全てを撮影できたとは言い難く、私の写真は、ガーデン・プロジェクトのほんの一部を切り取ったにすぎません。それはドキュメントというより、人々の動き、光や風、木々や花、そして土地から受ける自然のエネルギー、それらの瞬間に反応してシャッターを押した印象の写真群といえます。

「大地とつながることで、人は希望が持てる」というキャスリンの言葉は、労働と撮影の両側にいたからこそ、私の中でリアリティを持ち、写真として実践することができたように思います。