| gallery mestalla |『渡辺兼人ワークショップ第一回写真展』|

石毛健太郎 Kentaro ISHIGE

僕はウェブサービスの開発を仕事にしている。
見やすさや分かりやすさを意識しながら、データを根拠に画面を設計し、人の視覚や心理を望むべき方向へ誘い、利益を作る。

しかし、そんな作為ある画面作りに疲れてしまうこともある。

写真では違うことがしたかった。
そうして、スナップを始め、傾倒していった。

道行く人々の動きは全くもって予測できず、そう簡単に画面を作る余裕などくれない。とことん翻弄されたが、それが逆に僕を熱狂させた。

明確な作為から少しでも開放されるため、不慣れなフィルムカメラを使い、ファインダーも覗かず、ただただ生理的反応を契機にシャッターを切った。まともに写っていることを期待しながら。

ある日、VUCAという言葉を知った。
以下の4つの単語の頭文字を組み合わせたらしい。

Volatility (不安定)
Uncertainty (不確実)
Complexity (複雑)
Ambiguity (曖昧)

もともとは軍事用語だったが、今では見通しが立たない混沌とした世界を指すビジネス用語として使われているとか。

VUCAは僕が追い求めていたものであり、今回の写真行為を象徴する言葉のように思う。